【その日の獣には、】紹介・感想

 

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目次

作品概要

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作品名
その日の獣には、(公式サイト)
ブランド
minori(公式サイト)
シナリオ
花見田 ひかる / 此ノ花 しな / 鋏鷺
キャラクターデザイン
konomi(きのこのみ) / 蟹屋 しく / 柚子奈 ひよ
音楽
天門
OP

www.youtube.com

体験版

公式サイト体験版リンク

 

あらすじ

主人公とヒロイン3人が演劇部に入部。
夏の大会の参加資格を得るために、4人で演劇に励むお話。
いわゆる学園もの&部活動ものです。

主人公らが演劇に励む傍ら、クロガネという謎の男性(イケボ紳士)がヒロインに接触
クロガネの力によってヒロインと演劇に影響が・・・
ミステリアスな要素もあります。

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以下公式サイトあらすじより

 

学園には、ウワサがあった。


友瀬 律希が妹の瑠奈、幼馴染の池貝 舞雪らと通うのは、女優・俳優はもちろん、
著名な脚本家を輩出するなど、演劇に関する活動の盛んな学園。

入学後、幼い頃から演劇に触れていた律希と瑠奈のふたりは、何かと周囲から浮きがちな
クラスメイトの深浜 祈莉を誘い、更には律希を慕う舞雪も伴って、演劇部に入部する。


全国大会へのステップとなる学園内予選に向け、張り切る律希たち。

が、一年生には予選に参加する権利すら無いという。

まだ経験に乏しいとはいえ、参加すらできない事に納得のいかない彼らは、
何とか一度、舞台で自分たちの演技を見てもらう約束をとりつけるが …… 。


舞台に取り憑いた幽霊のウワサ。


「その霊はね、演劇に関する願いなら “ 何でも ”  叶えてくれるんだって ― 」

 

攻略ヒロイン

瑠奈

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主人公の妹。

マイルドにいえばツンデレ妹。(どちらかといえば悪い意味で)ツンデレの域を超えるツンぷり。

目立ちがりやの利己主義性格。察してください。

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↑開きなおっております

舞雪

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※胸揉まれている方

くすはらゆい枠。
minoriの18禁作品はくすはらゆいが皆勤賞をとっている。

くすはらゆいといえば妹や幼馴染、年下ヒロインといった可愛いキャラを演じるイメージが強いですが、minoriの過去作品では年上お姉さんやクールキャラなど珍しい役柄が多いです。
※ソレヨリノ~トリノラインの作品に関しては

そんな中で本作のくすはらゆいは幼馴染の可愛い系ヒロインであり、世間一般的には平常・minoriの作品にしては珍しい役柄です。
めっちゃ可愛い子です。可愛い以外のワードが出てきません、だって可愛いんだもん。

 

祈莉

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本作センターヒロイン。
交友関係が薄く、周囲から浮いていた女の子。

交友関係が薄い女の子が恋をすると、めっちゃ依存してきがちです。
この子も当然依存してきて、それがとても可愛いです。
特にこの子はルート中に自身の可愛さを10倍にパワーアップさせる究極奥義を展開してきます。それがとてもとても可愛いので、プレイする方はお楽しみに。

個人的に黒リボンが好きです。

 

評価

 

 

内容 評価
総合評価*1   A-
シナリオ ★★★☆☆
キャラクター ★★★☆☆
グラフィック ★★★★★
BGM ★★★★★
主題歌(OP・挿入歌・ED) ★★★★☆
Hシーン ★★★★☆
システム ★☆☆☆☆

 

minoriの作品に共通していることはグラフィックと音楽の完成度の高さです。
間違いなく美少女ゲームブランドダントツトップの完成度の芸術作品です。

グラフィックはとにかく綺麗。そしてヒロインが動く動く。眉や口がセリフに合わせて動きます、しかも他作品に比べて動きに違和感が少ない自然な動きなのが凄い。
ヒロインの口元の口紅や頬の赤らみといった表情の描写丁寧で、表情の豊かさや魅力を底上げしています。
グラフィックについては、全美少女ゲームダントツトップだと思います。

音楽に関しては、音楽鑑賞できるレベルでよい曲の集合体です。シナリオの重要場面でのインパクトも上げることにも貢献しているので是非プレイして聞いてみてください!

 

そしてminoriのもう一つの共通点は、ヒロインが全員巨乳であることとHシーンの富さ

ヒロインの胸の大きさやばいやばい。普通の日常シーンでも胸の大きさに目がいってしまい集中できないことはminoriの作品をプレイしている人あるあるだと思います(ですよね?)

そして、えちえちなお胸なヒロインとのHシーンの数も豊富です。
エロゲのHシーンは普通1シーンで2体位でそれが3~4本くらいかと思います。
しかし、minoriの作品のHシーンは1シーンで4体位くらいあります。そして、それが3~5本セット。しかも、これは1ヒロインでのお話。3ヒロインいるのでだいたい40近くのHシーン収録。
シナリオゲーとは思えないえっちなオタク向けの特大サービス精神がminori作品の魅力。

 

シナリオについて1点注意事項。

演劇をメインとした作品ですが、演劇シーンを期待している人には全くお勧めできません。
演劇シーンはほぼありません。

この作品は、演劇自体ではなく、演劇を上演するまでの準備・稽古における登場人物の心理描写をメインとしています。迫力ある演劇シーンを期待している人には確実に合わないので注意です。

 

システムに関しては品質最低レベルです。
minoriのゲームは全て操作性が最悪です。
全体的にボタンの操作性が悪く、各ボタン機能が使いにくいです(実際に使ってみればわかると思います)
バックログからシーンジャンプができない(前のシーンがそのまま表示されるタイプの仕様)など、システム面についてはかなり使いずらいというのは覚悟しましょう。

 

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【注意】以下本編のネタバレが含まれます。未プレイの方はブラウザバック推奨

minoriの作品のタイトル画面は時間によってCGが変化します

 ↓夜ver

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他の時間帯は実際に買って見てみましょう!

 

 

 

 

 

 

 

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攻略順

最初は瑠奈ルートと舞雪ルートの固定。
上記2ルート攻略後に祈莉ルート解禁。

瑠奈ルートと舞雪ルートはどちらから攻略しても問題ないです。
強いて言うなら、共通ルートの展開的に舞雪ルート先がいいかもしれないです。
祈莉ルートが実質グランドルート。

感想

瑠奈ルート

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祈莉から「己の実力を過信し、自惚れ、他者を罵り、心の安寧を得る人。典型的なナルシスト」と好き放題に酷評されるヒロイン。
この子はエゴイズム(利己主義)を象徴したヒロインです。

作中では、自身の演劇の才能の程度を理解しつつも受け入れられず、周りにできる演者であるかのように演じたり、周りを罵ります。そして、自身のエゴを満たすため、クロガネと契約します。
が、代償で過去を失ったことで主人公が記憶が失われている点や自身が失敗から努力をした日々の喪失に対する不満が爆発して契約解除という流れに・・・。

瑠奈ルートをプレイしているときは、彼女の言動は支離滅裂で意味不明な点が多かったですし(特に自分で代償覚悟で契約しておいて、代償で主人公が瑠奈の思い出を忘れてたらぶちぎれるのは正直ドン引きしました)

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しかし、祈莉ルートをプレイすると、瑠奈の言動に対する印象が大きく変わりました。

この瑠奈の支離滅裂な言動は、「孤独」への恐怖という「エゴ」であったのではないでしょうか。
演劇で実力を発揮できなければ居場所がなくなる。だから、演劇ができる子のように振る舞う必要がありました。
クロガネとの契約により力は得たが、過去を失います。過去を失ったことで主人公らとの人との繋がりが喪失・希薄になることに「孤独」を感じて耐えられなくなりました。

一見瑠奈の言動は支離滅裂のように思えますが、それは「エゴ」に囚われているが故の苦しみという理にかなった言動であったと感じています。
とはいえ、一見すると異常者のような言動ぷりなので、美少女ゲームのヒロインとしては不遇な役を担わされて少々可哀そうだなと思ってしまいました。

舞雪ルート

瑠奈がエゴイズムの象徴である一方で、舞雪はオルトルイズム(利他的)の象徴だと捉えました。

幼少期の頃から主人公への想いを募らせており、主人公に喜んでもらえるよう行動をしてきます。そのため、演劇の発表において舞雪自身が主人公の足を引っ張っている状況に陥った際に、自己犠牲(代償)を払ってでも演劇を成功させようとクロガネとの契約を結びます。


瑠奈と真逆の思想でありながら、その思想故にクロガネに依存するという結果になる点は非常に興味深いものであると感じました。

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クロガネの力に頼るものの、クロガネの力による虚構の舞雪の存在というものの苦しむこととなります。結果として主人公とともに乗り越えていくこと、クロガネの契約を解除する道を選びます。この辺は根本原因は異なるものの瑠奈ルートと同様の展開となっています。

瑠奈ルートも舞雪ルートもクロガネの力に依存する過程は比較的丁寧に描写されている一方で、クロガネの依存から解放された契約解除後の描写が雑なのが残念でした。
クロガネの力に依存せず、乗り越えていくことを決意したヒロインと主人公がどう成長し、どう未来に影響するかという点が曖昧すぎる点が物語としての結末が弱くなってしまった印象です。最後の最期で読み手が置いていかれたような感覚になりました。

 

祈莉ルート

※実質グランドルートなので、グランドルートとしての感想も添えます

■クロガネの存在

ヒロインらに「魅了」の力を与えてきた人物(幽霊?)

その目的は、自身が演ずることの叶わなかった幻の演劇「ソノヒノケモノニハ、」を完成させること。そのために、ヒロインらに演劇を完成させる力を与えます。

ただし、ヒロインらに力を貸すのではなく、代償と引き換えという契約という形式をとります。これは「ソノヒノケモノニハ、」を真の意味で完成させるという目的であると推測されます。
「ソノヒノケモノニハ、」は恋が結ばれないというビターエンド。その獣と少女の心情をよりリアリティを持って演じるために、代償という犠牲が必要であったということかと思います。

演劇を上演できない(完成できない)ことへの未練というクロガネエゴの浄化という一面も有する作品だったといえるのではないでしょうか。

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■祈莉の存在と「ソノヒノケモノニハ、」の完成

瑠奈が「利己(エゴ)」、舞雪が「利他」の象徴であるのに対し、祈莉は「孤独」を象徴していると解釈しました。

演劇「ソノヒノケモノニハ、」の主人公は「正義」という「承認欲求」というエゴを持つ存在でした。しかし、魔女に獣にされたことで村人から「正義」と慕われるという「承認欲求」を満たせなくなります。
その結果、村から離れ孤独に生きる、エゴを失うこととなります。

本作において祈莉の存在は、「孤独」であるが故に「エゴ」を持たない存在であったのかなと考えています。
そのためキャラ設定として「幼少期より身体が弱かった為、
ちゃんと通学するのは今の学園が初めて。」という「孤独」になるための設定が用意されたのでしょう。そして、「孤独」であった祈莉が主人公と瑠奈・舞雪と出会うことで「孤独」でなくなります。

「孤独」でなくなることで、主人公らのために力(エゴといいう欲望)を求めるようになりました。「孤独」であった祈莉に居場所ができたことで、その居場所を失い「孤独」となることを恐れるという「エゴ」を表現していると捉えました。

 

演劇中でも祈莉の「孤独」と「エゴ」の関係性を表現したシーンがありました。

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↑「孤独」を認識したとき、人は「孤独」を避けるように行動するため「孤独」ではなくなるということかと思います。人は「孤独」を嫌う「エゴ」に囚われた存在であると伝えたいのでしょう。人は本質的に「孤独」になれないのです。

 

「孤独」であった祈利でしたが、主人公の「愛」と瑠奈と舞雪の「友達(友情)」を知ることで「孤独」ではなくなります。「孤独」を乗り越えた祈莉と主人公は、未完成であった「ソノヒノケモノニハ、」を完成させるべく、クライマックスシーン後に、2人の物語を加筆します。

 

主人公の母が描いた「ソノヒノケモノニハ、」の獣とヒロインはそれぞれ

獣は少女へを愛することと村へ帰ることを願う。
少女は獣を愛することと獣のためになることを願う。

という思いを抱いていたのだと私は思っています。
この両者の思いから、少女は命を捧げ、獣のために獣の願い「人に戻ること」を叶えます。獣という不幸から解放するためにです。
少女はこれで「じゅうぶん」である、幸せであると考えたのだと思います。
オリジナルの「ソノヒノケモノニハ、」ビターエンドで終えます。

 

しかし、主人公と祈莉は、獣と少女の真の思いが「共に生きること」であったと解釈します。獣という姿や形といったことは小さい欲望です。2人で生きることは不幸を幸福に変えていくことができる永遠の希望、「想い(愛)」という「エゴ」であると説きます。

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主人公と祈莉が歩む未来の物語と信念を受け取ったクロガネは浄化されます。
これがカタルシスってやつでしょう、たぶん(難しい用語使いたいだけ)

 

クロガネの最期のセリフは「これで、じゅうぶんだ」。
「ソノヒノケモノニハ、」において獣を人間化した少女の最期は「じゅうぶんな、はずだった」と断定はしていません。この点から物語を描いた主人公の母もどこかで「じゅうぶんではない」と感じていたのではないでしょうか。
もしかしたら、クロガネも心のどこかで主人公の母と同様にこの物語の結末に納得が抱いていなかったのかもしれません。
どちらにしても、主人公が選んだ物語はクロガネにとって「じゅうぶん」なものであり、未完成であった「ソノヒノケモノニハ、」は完成を遂げるのです。

この作品を通して伝えたかったことは、「愛(想い)」=「エゴ」であることと「愛」という「エゴ」の美しさと可能性(希望)だったのではないでしょうか。

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↑クロガネの最期のセリフの余韻ぱない。最高のセリフチョイスでした。

まとめ

おそらくプレイした人の中には、つまらないと感じた人が一定数いたのではないかと思います。主題である「エゴ」に関する設定に拘るあまり、美少女ゲームとしての面白さに欠けていたのが原因と考えます。演劇シーン等の作中で盛り上がるシーンの少なさ、クロガネの過去など要所要所での深堀の甘さと説明不足故に、読み手がどこか置いていかるような仕上がりになっていたかなと個人的には感じています。

一方で、主題である「エゴ」に関する設定はとてもよくできていたと思います。
ただ、私はあまり知識人ではないので、プレイ中は何を伝えたいのかよくわからなかったです。感想記事を書くにあたって思考を整理していく中で、この作品の面白さに気づいたという感じでした。なので、作品プレイ中より記事書いているときの方がこの作品を楽しめていました。

あくまで個人の意見なのですが、この作品に関してはネタバレ覚悟でプレイ済みの人の「エゴ」関係の考察・感想を読んでからプレイしてもいいかなと思いました。
作中であまり解説がないので、プレイ前に事前に理解してからの方が作品を楽しめるような気がしています。

まとめると、「エゴ」というメッセージ性という点では完成度は高いですが、美少女ゲームとしての面白さに欠ける作品でした。
微妙に人に勧めにくい感じの作品です()
「エゴ」といった哲学思考好きそうな人には合うかもしれないです。

 

以上、承認欲求というエゴに満ち溢れた紹介・感想記事でした~

*1:評価はS、A+、A、A-、B+、B、B-、C~で評価しています。